「おひとりさま」の語源はどこから?
テレビなどメディアでの特集記事や、旅行・ファッションなどの広告にしばしば登場している「おひとりさま」という言葉ですが、これが初めて提唱されたのはジャーナリストの故岩下久美子さんの著書でした。
タイトルもズバリ「おひとりさま」という本で、2001年に中央公論新社より出版されました。
岩下久美子さんは自らが主催する「おひとりさま向上委員会」を書籍出版以前の1999年に立ち上げており、のちに趣旨に賛同した人たちによって意志が引き継がれています。
岩下久美子さんは他にも「ストーカー」問題を扱った書籍やルポで有名な方で、それまで性犯罪やセクハラなどの被害にあう女性に対して向けられていた「被害を受けた女性にも責任がある」「自意識過剰の被害妄想でしかない」という認識に疑問を投げかけました。
岩下久美子さんのもう一つの代表著書である「人はなぜストーカーになるのか」(2001年・文藝春秋)が出版されてそろそろ20年になるかという現在ですが、そのわずかな期間に女性が自分の意志で人生を選ぶということへの抵抗感はかなり低くなったといえるでしょう。
「ストーカー」と「おひとりさま」は一見かけ離れた話題のように思えるかもしれませんが、実際にはそれまでは地域社会や年配世代の意見、周囲の男性から人生を決定されることが当たり前であった女性たちが、ようやく自分で自分自身に関わる決定ができるようになったという同じ根から発生したものです。
実は奥が深い「おひとりさま」という生き方
岩下久美子さんが提唱してから「おひとりさま」という言葉が一気に社会的に認知されるようになりました。
しかし同時に正しく言葉の意味を理解しないまま表層的に受け取った人たちによる揶揄としても使用されるようになったのです。
現在でも一人で行動する女性や男性に対して悪しざまなことを言う人が見られますが、それは本来的な「おひとりさま」の意味ではなく「一緒にいる人がいない寂しいやつ」「友達が作れないコミュニケーション能力が欠落しているやつ」といった古い認識のままとらえているからでしょう。
しかしもともとの岩下久美子さんの唱える「おひとりさま」とは、シングル女性だけの呼称ではなく既婚者やパートナーがいる女性であっても当てはまるいわば心がけ(メンタル・マナー)というものです。
誰かと一緒にいることを否定するのではなく、自分にとって心地よいことを自分で選んでそれを実行するということをライフスタイルの中に取り入れていくということが正しい認識です。
言い換えれば女性でも男性でも、既婚者でもシングルでも、精神的に自立をした生活をすることができるということが「おひとりさま」を楽しむためのポイントです。